借金再生録 #3|債務者思考の定着

借金再生録

在籍確認と即日承認

禁断の増枠申請をした翌日、速攻で職場の代表電話にジャパンネットバンクから電話が掛かってきた。
後輩がその電話を取った。
後輩「弱小先輩、◯◯株式会社の田中さんって方から電話です。」
私 「ん?誰やろな。」
田中「弱小様、在籍確認できましたので、増枠申請を承りました。本日からご利用できます」
受話器を受けた瞬間、胸がドクンと跳ねた。「ありがとうございます」と答えながら心はもう週末の馬柱へ。(本来こっちが感謝される側なのだが)
「ふー、やれやれ。これで給料日まで生活費の心配がなくなったわ・・・。」と典型的な多重債務者の思考になっていた。
帰りに3万円下ろし、競馬新聞を買って寮へ戻る。

痛みのない借金(同一口座の罠)

帰宅してからは、先週の負けた記憶がすっかり消し飛び、PCの予想ソフトTARGETと競馬新聞をにらめっこするいつも通りの週末を迎えていた。
翌日の土曜日からは、早速増枠分をPATに移して1日中競馬三昧。
しばらくは勝ったり負けたりを繰り返していたが、徐々に負けが膨らんできた。

前回の記事にも書いたが、借入口座とPATが同一口座だと、現金の移動がない。数字だけが増減し、痛みが鈍る。
そして3ヶ月後に予定通り(?)借入残高が天井の200万円に接近。
ある日曜日の最終レース直前で、とうとう借入残高は198万7,000円に到達した。出金可能額はわずか13,000円。財布には入っているカネはわずか935円だ。
「これでは給料日まで生活費が持たんな・・・。」
次の給料日まで3,000円ぐらいはさすがに必要ということで、1万円だけPATへ移し、いつもの三連単ではなく当たりやすい複勝(該当馬が3着以内に来れば的中)という馬券種で1万円の1点買いを敢行した。

ファンファーレが鳴ってゲートが開いた瞬間、1万円を託した馬は大きく躓いて出遅れ、最後方からのレースになった。
「ウソやん・・・」と天を仰ぎ、絶望感に襲われたが、向正面から果敢に仕掛けて最終コーナーではすごい手応えで真ん中やや後ろまで追い上げていた。
全身にアドレナリンが駆け巡り「◯◯(騎手名)、差せー!」とTVの前で怒鳴りまくった。応援の声が届いたのか、次々に前の馬を追い抜いて怒涛の追い込みを見せる。
「あと1頭や!いける!」と心の中で的中を確信したが、無情にも3着馬にクビ差届かず4着でゴール。もちろん4着ではハナ差だろうがクビ差だろうが10馬身離れてようが払戻金はゼロである。

この瞬間、借金残高は199万7,000円になり、ほぼ限度額に到達した。

日曜最終レース後:借金残高199万7,000円(財布は935円)

レース後、頭が真っ白になって「やってもうた・・・」と呟き、ベッドに大の字になってただただ天井を見つめていた。
そして気が付くと眠っていた。2時間ぐらい眠ったところで目が覚めると急激な空腹が襲ってくる。
普段の夕食では基本的にしっかりとした定食を食べるのだが、残金935円なので激安ファストフードに行かざるを得ない。
当時の牛丼チェーン店は300円ぐらいで牛丼を食べられたので、松屋へ行って牛めし(並)だけ頼んだ。松屋は無料で味噌汁が付くのでありがたい。
借金返済計画が頭をぐるぐる巡りながら牛めしをかき込む。しかし、味はほとんどしなかった。

月曜の健忘、金曜の再燃

翌朝に目覚めると頭が軽くなり、昨日の痛みをまた忘れ始めていた。いやはや、人間の脳というものはよくできている。
さて、当時のメインバンクは三井住友銀行で給料はこの口座に振り込まれていた。
SMBCダイレクトにログインすると、こちらでも三井住友銀行カードローンの宣伝が目に入って来た。
その宣伝をクリックすると、利息8%で250万円まで借りられるようである。

低金利の誘惑

また悪魔が囁き始める。「利息も10%→8%になるし、さらに50万円の借入もできるようになる。これで一発当てて返せばいいじゃない?」
「いやいや、ただでさえ200万円という、とんでもない借金を抱えてるんや。これ以上借入額が増えたら債務整理せなアカンぞ」と首をすくめて左右に振り、一度は誘惑を断ち切った。
しかし火曜日、水曜日と経つにつれ「よう考えたら200万円250万円もそんな変わらんよな。それに利率も下がるし、こっちの方が長い目で見たらお得や」とまたもや都合の良い思考パターンが始まった。
そして、前回と同じように吸い込まれるように三井住友銀行カードローンの申し込みボタンをクリックしていたーーーーーー。

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