借金再生録 #4|借入額=自分の資産の誤解

1) JNBの逆襲電話

翌日、出社して三井住友銀行からの在籍確認電話をソワソワしながら待った。すると携帯に見知らぬ番号から電話が鳴った。

「ジャパンネットバンク(JNB)です。まだ増枠できます。」——「え!?あー、ちょっと今、業務で忙しいので」と面食らってたどたどしく電話を切った。どうやらJNB側が私の借り換えの動きを嗅ぎつけたようだ。

2) 在籍確認と借り換え

間もなく、前回の増枠時と同じように三井住友銀行から部署の代表電話に在籍確認があった。前回同様に「在籍が確認できました。明日から250万円までお借りできます。」と言われて電話を切った。

「やれやれ、これで50万余裕ができたわ」と、典型的な「借入可能額=自分の資産」と思い込む債務者思考に陥っていた。

翌日、SMBCダイレクトにログインするとカードローン250万円が借りられるようになっていた。すぐさま200万円を借りてネットバンキングでJNBへ振込み、JNBの借入額を0にした。そしてすぐにJNBのカードローンを解約。なぜかマウスをクリックした手が震えて冷や汗をかいていた。

3) 予定通り天井張り付きへ

結局また前回と同じ思考のループが始まった。「この50万円で絶対に借金をチャラにしてやる」。

今回はPAT口座とカードローン口座が別なので、一度現金を下ろして移動させなければならない。これがある程度のブレーキになるかなと甘い認識を持った。

確かに資金移動の手間がある分、何レースか発走時刻に間に合わず資金を溶かさずに済んだかもしれない。しかし実際には、痛みのブレーキには全くなっていなかった。

そして増額からたった1ヶ月で借入残高は248万円に達していた。

4) 日曜最終レースの勝負

とある日曜日の最終12レースで最後の勝負に出ようとしていた。どこかで見た光景だ。

今回は残り2万円を③の馬の複勝に全ツッパ。③の複勝は4倍~7倍(複勝は3着以内に入った馬の人気でオッズが変わる)。3着以内に入れば最悪でも8万円は返ってくる。

ファンファーレが鳴り、ゲートが開く。③は好スタートで好位につけた。道中はインで脚が溜まり、4コーナーでは前の2頭を追って3番手へ。

「いいぞ!この手応えなら3着以内は間違いない!」と心臓が高鳴る。しかし最後の直線、外から来た馬たちに被されて完全に内で閉じ込められた。進路がない。「なにやってんねん、ボケ!!◯✕※△(騎手名)!!」

残り100mでようやく進路が空き、ジョッキーがムチを連打。

「差せーーーーーー!!」——結局③は1,2着までは届かず、3着争いに⑭と共に滑り込んだ。スローVTRでも判別できない僅差。

電光掲示板の3着は空欄のまま「写(写真判定)」が点滅。祈りながらJRAのレース結果のサイトをF5連打。

5分後、確定ランプがともる。無情にも空欄だった3着に、4着に、着差はハナ。膝から崩れ落ち、「またやってしもたー」と床にうなだれた。

5) 財布183円とクレカ先延ばし

「やっぱりこんなことしてたらアカン、明日から心を入れ替えて真面目に働こう」と独り言を呟いたまま眠りに落ち、2時間ほどで汗だくになって目が覚めた。急激な空腹。財布の残金は183円。もはや松屋ですら夕食が食べられない。

途方に暮れていたら、机の引き出しの奥で会社で作らされたクレジットカードを思い出した。当時はまだファストフードがクレカ非対応だったと思う。わざわざクレカの使える高いファミレスへ行き、ハンバーグ定食をカードで切った。この時も、ほとんど味はしなかった。

6) 低金利の罠(置き換え vs 積み増し)

この日から、カードを切って借金を先延ばしするという“知恵”をつけてしまった。

また、借り換えで利率が下がると「置き換え」だと錯覚しやすいが、実態は積み増し。借入可能額=資産という思い込みに、低金利の安心感が加わって、ブレーキはさらに効かなくなる。写真判定のハナ差は、生活の決定打になり得る差ではなかった。

コメント